--.--.-- *--*

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2007.07.07 *Sat*

修二と彰

放課後の教室で、ひとり。
俺は、願いごとをひとつ探してた。


551



星に願いを きみの願いを

半年前に越してきたこの海辺の町は、とても綺麗に星が見える。
だからという訳ではないだろうけど、まさか高校生にもなって七夕のイベントに参加させられるとは思わなかった。
教室の隅には、笹飾りをまとった大きな笹。
俺の手元には、朝のHRで配られた一枚の短冊。

さわさわ・・

開け放した窓から舞い込むオレンジ色の海風が、笹の葉とクラスメイトの願いをのせた短冊を揺らした。
潮の匂いと青臭い笹の匂いが混じる。
みんな結構はしゃぎながら思い思いに願いと自分の名前を記した短冊をつるしていて、その数は、一コマ授業が終わるごとに増えていった。

なんでみんなそんな簡単に願いごとが書けんだよ。
なんで適当なことさえ思いつかずにこんな時間まで居残ってんだよ俺。

つか、これって、誰か願い事叶えてくれんの?
彦星と織姫?
1年に一回しか会えなくてあとは暇だから暇つぶしに誰かの願いでも叶えてまわってんの?
そんなボランティアな話だったっけ?

持て余した短冊をつまんで、目の前に翳して、ひらひらと振ってみる。
濃い藍色からうすい水色へとグラデーションを描く和紙は、このままできれいな笹飾りになるだろう。

あーもう・・。

空短冊のままでいいや、とため息をひとつついたついたそのとき、教室のドアがガタッと開いた。
「草野・・」
帰ったんじゃなかったのか、あいつ。
放課後チャイムが鳴ると同時に教室から飛び出していってたけど。
「しゅ~じくん、発見~!やっぱりいたナリ~。自転車まだあったから・・自販によってきた」
彰が、俺に笑いかけながら紙パック入りのコーヒー牛乳をひとつトンッと机の上に置く。
「はい。差し入れだっちゃ」
「・・サンキュ」
ちょっと喉が渇いていたから、有難く奢ってもらうことにして、もうすでに汗をかいているパックにストローを差し込んで、一口飲んだ。
甘くてほろ苦いコーヒー牛乳の味が口の中に広がる。
俺の席の前の椅子をひいて背もたれに肘をかけて向かい合わせに座った彰も、同じようにストローくわえていて、
上下する喉を見ながら、
今、口ん中同じ味してんだなぁ・・・
なんて思う。

「草野、帰ったんじゃなかったの?」
「ん・・や、緑のぺんを買いに行ったのよーん」
「緑のペン?」
「そ。緑色のペンで書くと願い事が叶うんだっちゃ。って、知らないの!?しゅ~じくん」
「知らね・・つか、色とか関係あんの?」
「あんのー!これだからしゅ~じくんは・・」
と言いかけて、彰は机の上の何も書かれていない短冊に目を落とした。
「や、えっと、これは・・」
悩んでいたなんて悟られたくなくて焦ったけど、咄嗟にうまく言い訳なんて出てこない。
「修二はさ」
彰は、俺の短冊を人差し指で軽くなぞった。
「いーっも人のことばかり一生懸命だから、自分のことになるとわかんなくなるんだね」
「は?・・なにそれ」
何を言い出すかと彰を見れば、なんだかすごく優しい顔して見つめてくるからちょっと戸惑う。
「願い事、交換しよっか?」
「・・交換?」
彰は、にまっと笑うと、鞄から自分の短冊を取り出し、買ってきたという緑のペンで、

”修二くんのおねがいごとがかないますように by 彰”

と書いた。
「ちょ・・なにそれ・・」
「はい。しゅ~じくんにも貸したげる」
にっこり笑いながら、俺に緑のペンを差し出す彰に、思わず受け取ってしまった。

あーもう・・。

どうせ何も思いつかなかったし。
コーヒー牛乳奢ってもらったし。
ま、いいかと思って。
ずっと空っぽだった短冊に緑のペンで願いごとをのせた。

”草野の願い事が叶いますように 桐谷修二”

「もう、しゅ~じくんてばなんで”彰”って書いてくれないのー」
「うっせーよ」
「他人行儀だっちゃ」
「他人だろ」
「ひ・・ひどいナリ。しゅ~じくんが苛めるナリ」
よよよとわざとらしく泣き崩れる彰を放って、俺は中段あたりの笹の葉に短冊を結びつけた。
「ほら、お前もつるせば」
「では、僭越ながらしゅ~じくんのお隣に」
「やめろ!」
タタタターン♪と結婚式のときによく聞く曲を鼻歌で奏でながら、彰が俺の短冊の隣に自分の短冊をつるす。
「ちゃんと緑色で書いたから願いはきっと叶うナリー」
「ふ、どうだか・・アバウトすぎだし」
「こっちの方が、お願いストライクゾーンが広くていいのー」
「わけわかんねぇよ」

2枚並んだ短冊が揺れる。
なんだか可笑しくなってしまって、俺は下をむいてこっそり笑った。




翌朝、七夕の日。
俺は、昨日彰の口車にのったことを激しく後悔する羽目になった。

さわさわ・・と揺れる笹の葉。
ざわざわとざわめいている教室。
笹飾りの前に集まっているクラスメイトがわらわら。

「な、見た?これ・・」
「やーん、やっぱりこのふたり怪しくなぁい?」

戸口に突っ立ったまま呆然とする俺。

怪しいって、なに!?
やっぱりって、なに!?

「おっはよ~!しゅ~じくん!」
「く・・草野」
彰は、俺の後ろに立って、額に手をかざして俺たちのことが話題になっている教室を眺めた。
「あらー早速俺の願い事が叶いそうな気配ナリー」
「は?なにそれ・・」俺は、肩越しに彰を見上げて睨みつけた。「よくわかんねぇけど、じゃおまえ俺の願い叶えろ。あれ破ってこい!」
「ムリ!」
一言で却下して、彰は、笹の葉~さ~らさら~と歌いながら教室に入っていく。
くっそーーっ!緑のペン効かねぇじゃんかよ!


俺は・・

俺は・・

俺は彰の口車にのらない人間になりたいです・・(願)






羽鳥は、迷わず短冊にお願い事が書けます。

一攫千金!

欲望一直線なり~。

COMMENT

コメントありがとうございます♪
●らんさまへ

ちょびっとでも楽しんでいただけましたら嬉しいで~す。
別館ゆきかなぁと思ったのですが、ま、いっかとこっちにのせちゃいました。
彰のあの独特の口調をまねて書こうとすると照れくさくて困るのですが、彰っぽくなってたかな・・。
by 羽鳥かの@お返事 #-
2007/07/09(月) 01:54 [Edit
きゃぁ~
かのさん、かのさん!
七夕の日になんて素敵なお話なんでしょv-10
好きです、こーゆーの(笑)
しっかり二人の声が頭の中をぐるぐる~。
すっかり楽しませていただきましたぁ。
by らん #DEn/WaYs
2007/07/08(日) 18:07 [Edit

Comment Form


秘密にする
 


10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

プロフィール

羽鳥かの

  • Author:羽鳥かの
  • KAT-TUN
    ときどきKinkiKids、
    日々是好日なり。

カレンダー+アーカイブ

プルダウン 降順 昇順 年別

09月 | 2017年10月 | 11月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -


最近の記事

最近のコメント

コンテンツ

おともだちLink

counter

Moon


・月齢・


moon phase info

プラネタリウム

ブログ内検索

Copyright © Selfish-kat-tun-KAN All Rights Reserved.
テンプレート:サリイ (ブログ限定配布版 / 素材: もずねこ)    
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。