--.--.-- *--*

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2007.03.15 *Thu*

AH3 黒沢くんとはじめちゃんの事件簿

Side:はじめちゃん 1


ピースは揃っているんだ。
そう、あとはそれぞれのピースを一枚の絵になるように組み立てていくだけ。
犯人に紛れ込まされている偽物ピースを排除するのが厄介だけれど。
どれが偽物ピース・・?

ふかふかの布団とパリッと糊の効いたシーツはとても心地いいのに、結構な歴史を誇る木造造りの老舗旅館は俺には寂れすぎていて、無言の緊張を強いられている感じがして、上手く眠りに落ちていくことができない。
月明かりに似せた光をはなつ和紙の張られた小さな照明が枕元にひとつ。
部屋の隅にまでは光が届かず、やたらと高い天井の四隅は闇にそまって境目が見えない。
繁華街から少し離れたここは外からきざす明かりもなくて、不夜城育ちの俺は闇ってこんなに深いものだったのかと驚いた。
うっすら浮かんで見える天板の木目が、猫になったり帽子になったり、空にうかぶ雲みたいに移ろっていく様をみつめながら、今朝、巻き込まれてしまった殺人事件の記憶を反芻する。
なぜかいち高校生にはもったいない哉この旅館で部の合宿をすることになって、2日目。
俺と高橋と仲根と3人で観光客用の遊歩道を走っていた。
湿った空気に、緑の匂いがブレンドされて、気持ちのいい朝だった。
合宿とはいえ、中身は、お互いにくだらないこと言って笑ったり、ふざけて体をぶつけあったりして、ただだらだらと走るだけで、トレーニングにはまったく程遠い。
高橋に思いっきりぶつかられた俺は、勢いあまって遊歩道から転び落ちた。
そこで、目の前に転がっていた華奢なパンプス。
ぞわり・・とヤな予感で背中が粟立つ。
その先を数メートル辿ればすでに抜け殻になってしまってた女の人。

俺たちは携帯を持ってきてなかったから、ちょうど通りすがったカップルに事情を伝えて警察に連絡を取ってもらおうと声をかけた。
若い男とそいつよりは年上に見える女の人。
その女の人が、驚いて口元に手をあて、「・・さんっ」と小さな声でつぶやいた。
死体になってしまった人の名前。
駆け寄って行こうとするから慌てて止めた。
現状保存しなくてはならない。犯人が残しているはずの形跡を壊してはいけない。
なんか変なんだ、ここ。
どこか不自然。どこかわかんないけど。
俺の中の、そう、感ってやつが警鐘を鳴らしてる。

女の人は、自分の名前を”ノダ”と名乗り、同じ会社に勤めている同僚で、社員旅行に来ているのだと説明してくれた。
男の方はなるべく死体が目に入らないようにしたいのか、女の人の後ろに隠れるようにして肩越しからこそっとのぞいている。
なんだあのヘタレ・・って見ていたら、バチコーンと目があった。
それが黒沢明彦だった。

明らかに殺されてしまった状況の女の人は、恐怖よりも哀しい顔をしていた。
どうして?
なぜ?
見開かれたままの目がそんな風に問いかけてくる。
せめてその瞳をしずかに閉じさせてあげたいけど。
ごめんね。
呆然と立ち尽くしていた高橋と仲根が、静かに頭をたれて手をあわせていた。
俺も唱える念仏なんか思いつかなくて、ただ彼女のこれからの幸せを祈って手をあわせた。
いかにも安っぽい感傷だと我ながら思ったけれど。
アナタがダレかにコロされてしまったから出会ってしまった。
それも出会いなのならば・・。

俺、犯人つかまえるよ?


けたたましいサイレンが幾筋も鳴り響いたのは数分後。



Side:はじめちゃん 2


キリキリ・・。
俺と高橋と仲根、三人で川の字。
俺は真ん中で、右側に高橋、左側に仲根。で、キリキリと音がする左側を見れば、仲根が一生懸命歯軋りをしてる・・。
む。うるさい。
右手を伸ばして仲根の標準より大きめ?の鼻をつまむ。
ふがふが息苦しそうに口をぱくぱくして・・あ、起きるかなと思って手を離すと、ふはぁって息をついて、唇もごもごして、そのまま・・寝てる。
あはっ。おもしれー。

いつもはミユキに煩いって怒鳴られてばかりの高橋と仲根(俺もだけど)も、さすがに事情聴取は静かに慎重にぽつぽつと質問に答えていた。
そのうち、あいつらも俺もイラだちを隠せず無表情に無言になっていったけど。あー思い出しムカつきムカムカ。あのムノーネチネチ警部め。

あの時のいらつきのままに、記憶を再生する。
聴取は旅館の応接室を借りて行われて。
俺たちは、事件に関してはまったくの第三者だったから、発見者として拘束はされつつも緩やかに扱われた。
おかげで、すぐ側で並行して行われている東済商事社員への聴取を観察できたんだけど。
ムノー警部が無能ゆえに唯一役に立ってくれたとこだ。
社員への聴取は個人面談だった。
俺たちに繰り返し聞かれる質問もなおざりに、次々と入れ替わる東済社員の人達を見る。
2.3箇所の部署の合同だって言ってたけど、結構人数多い。東済商事って大きな会社なのかな。
なに、黒沢結構いいとこ勤めてんのかアイツ。
社員は皆、突然の惨事に驚いて青ざめていた。女の人達はみんなハンカチをぎゅっと握り締めて、嗚咽に詰まりながら流れ落ちそうな涙を拭う。
そういえば、一人だけ気丈な人が居たっけ・・。
ショートカットの美人なおねぇさん。

「失礼しまっす」ドアの開く音と共に、聞き覚えのある声。
あ、黒沢・・。
バチコーン、俺に気がついて、にこっと笑った。
なに、余裕じゃん?
朝と変わらない格好TシャツGパン。
こいつ幾人かの社員と比べるとますますチョロい・・じゃなかったチャラい。
会社員に見えないんですけど黒沢クン。
うっわ。よく見ると、左耳、ピアスしてるし・・!
黒沢は、ピアスに気がついた俺に気がついて、げっ。
パチリとウィンクした。刑事にコホンと咳払いされて、慌てている。
っは。バカだなあいつ。
ぼそぼそとした口調で、時折すんっと鼻をすすりながら、刑事の質問に答えている黒沢。
新入社員で日も浅く社員の交友関係はまだあまり把握していないこと、殺されていたオンナのヒトとは部署も違っていてそれほど面識がないこと、朝、散歩をしていたら偶然俺達と会って声をかけられたこと・・。
面識はないけれど、その死を悲しんでいる誠実さが伝わってきて。

あ・・こいつなんか結構いい声・・?

一通り型にそった質問が終わって去り際、俺の肩をぽんっと叩いていった。

む。

黒沢の次に入ってきた女の人。
やっぱりこの人もハンカチ握り締めて泣きそうなのを我慢しながら質問に答えていた。

・・・?!

あ・ナンかひっかかった。
あれ・・そういえば、あの人なんで。
黒沢と一緒に配属された派遣社員だと言ってた。黒沢と同じで職場では日が浅いはずなのに。
なんで、そういうの知ってんだろ?
女の人は裏でネットワークを持ってるっていうけど。


そんな噂話とか、する?




Side:はじめちゃん 3


ぐがっ!

キリキリ!

ぱちっ・・と目が覚めた。
あ・・俺いつの間にか寝てたみたいだ。部屋の中が青く明るい。
遠くで鶏や鳩の鳴き声がする。

近くで、高橋がぐがっ、仲根がキリキリ。
あはは。
寝ててもうるせぇなコイツら!

ふはぁ。
背伸びしながら身を起こせば。あらら、寝る前にしっかり前合わせしていた浴衣はあられもなくしっかりはだけてた。
おぉ・・!
今の俺、結構すごい格好!
巻いていた帯はそのままお腹にしっかりと残っているのに、なんではだけちゃうかなぁ。

ぐがーって眠っている高橋を見ると、布団からはみ出して見える上半身がやっぱりはだけてる。
「高橋!たーかーはーしー!!おーいおーい!」俺は、ゆさゆさ布団の上から高橋を揺すって起こした。
「起ーきーろーおーい。高橋くーん」
「っせーよ。なんだよ、まだはえーだろが」
高橋が、右手で髪の毛をがしがし掻きつつ左手でぽりぽり胸を掻きつつ、のそりと起き上がった。
「うん。早いンだけどさー」
「は?ふざけんなよテメ」
「や、ぷふっ。見ろ見ろ。俺、浴衣はだけてンの!」俺は、高橋の布団をばさっとめくって、
「お前もな。な?」
高橋もお腹に帯だけ残して前合わせが俺と同じようにはだけている。
「ふはは。おんなじだー」
「あー・・わりぃけど金田一。いつも言ってっけど。おまえの笑いつぼはわかんねぇつーの。起きぬけにはさらにキツい」
「えーだって。帯残ってて、ばーってはだけてるんだぜ?ふははは」
「・・おまえ朝っぱらから勘弁しろよ」
「あ!仲根も見よう」
「・・って、おい!人の話をきけ!」
唇もごもごしながら寝ている仲根(わーやっぱコイツ面白いな!)の布団をばさっとはぐってみたら。
「・・・こいつ、パジャマ着てるし」
前言撤回、コイツつまんねー。パジャマの裾をズボンにいれてるのは、ちょっと面白いけど。
「金田一、ナニしてんの・・?」
「仲根のパジャマのボタン外してんの」
「面白いか?」
「・・ぜんぜん」
「だよな」
仲根のパジャマをはだけさせてみたけど、全然面白くならなかった。
「朝風呂してくる」
「わ・・放置かよ」
高橋は、仲根のとこまではっていくと布団をかけ直してやって、俺が今まで寝ていた布団に潜り込んでまた寝てしまった。

「一緒にいこ・・気持ちーよ?」
と声をかけてみたけど返事はなくて、寝息がすぅすぅ。
今度起こしたらマジキレだな。
・・一人で行くか。

ゆるゆるになっていた浴衣の前合わせをしっかりと正して、一重の半纏を羽織ってタオルを持って、大浴場に向かった。




Side:はじめちゃん 4


朝風呂ってすごい気持ちいいよね。俺、お風呂超大好きな人。

温泉天国!極楽!バッチコーイ!

いつもならバックレる合宿も温泉につられてきたんだ。
まさか事件に巻き込まれるとも思わなかったし。
男湯と染め抜かれた紺色の暖簾をくぐって更衣室に踏み込めば・・あ。

「はじめちゃん!おはよう」
「・・はよ」

寝癖でぼさぼさの髪した黒沢明彦がいた。
「また会ったねー」にこにこと俺に話しかける。
「なんで会うんだろ。俺、ぜーんぜん会いたくないのに」
「ははは。はじめちゃんの冗談面白くなーい」
冗談なんかねぇよ。俺の冗談面白いって言われたことは確かにないけど。
マジなの!本気と書いてマジと読む、なの!
なんか黒沢って調子狂うんだもん。
着ていた浴衣さっさと脱ぐと乱暴に籠の中に放り投げて、黒沢に背を向けた。

「ふっはー!」
肌を心地よく刺激する熱いお湯に一気に身を沈めて。思いっきり手足伸ばして。
「極楽極楽」
「はは。はじめちゃん、おじぃちゃんみたい」
「おじぃちゃんは仲根だ」
「誰それ・・」
「ウチの中距離走者。パジャマ着て寝てる」
「はは。なんつーか、全然わかんないんだけど」
「・・んー」
熱めの湯に身を浸せば、寝起きの気だるさが吸い取られて、すぅっとクリアになっていく。
自然と思考が事件の記憶をたぐる。
昨夜、夢の入り口で、なにか引っかかっていたんだ。
そうだ・・あの女の人。ちょっとヘンなこと言ってた。
噂話ってどこら辺までが範疇だろ。昨日、こいつと一緒にいた”ノダ”と名乗ったおねぇさんに聞いてみようかな。

発見現場で感じた違和感の元、落ちていた釦、噂話・・。
ひとつひとつピースを取り出しては、はめ込む場所を探すけれど、ピタッとはまらない。
ぐるぐると考えをめぐらせていれば、ぽぉっとしてきて・・。

「ふはっ・・のぼせる」
涼を求めて内風呂から、露天風呂へ向かった。
春先の明け方の空気は冷たく澄んでいて、ほてった体に気持ちいい。

「はじめちゃん、ココロここに在らず、だね」
「あ・・あんた、まだいたの?」
「ま、つれないわ」
「ツレたくないもん」
「ははは。なにそれ」

黒沢は、足元だけお湯につかるかたちで岩に腰掛けて両腕を背もたれにした岩にあずけている。
ちぇ。やっぱこいついいガタイしてやがる。
俺も、黒沢から離れたところで、露天風呂のごつごつした岩のひとつのなかで手頃なのを見つけて、腰辺りまでつかって、湯当たりを冷ますことにした。
手の平で湯をすくって軽くはねさせながら、ぽたぽたと滴をたらせば、朝の太陽の白い光に反射してきらきらと綺麗だ。

「・・犯人見つけた?」
「候補者、何人かね」
「そのなかに、俺、入ってる?」黒沢は俺を試すみたいに薄く笑いながら問いかける。
「黒沢クンねぇ・・あんただったら楽だったよな。あっという間に捕まえられるんだけど・・」
「わ、何気に失礼なこと言うね。俺だって、用意しゅ周到綿密に裏工作仕込めるし!」
「や、そこで噛むなよ」意気込んでキメなとこ噛むから思わず笑ってしまう。

「はじめちゃん、俺のことつかまえてるよ?」

「・・は?」

ぼそっと小さな声で黒沢が何か言って。
黒沢を見れば、昇りかけの太陽の光が目に刺さって、逆光になったあいつの表情はわからなかった。

つかまえてる・・ってなに?

「はじめちゃん、陸上部なんだよね」
「・・そうだけど?昨日、言ったじゃん。あ、ラクビーとかしないから」
「そうじゃなくてさ」
ちょっと離れたところにいた黒沢は、ぱしゃぱしゃお湯をかきわけて俺の隣にやってきて腰掛けた。
「ちょ・・」あまりコイツと並びたくないんだけど。
「はじめちゃん、色白だなぁと思って。焼けないタイプ?」
「ワリィかよ」いかにも不機嫌な声音。言われ慣れてることだけど、こいつに言われたらなんかすっげぇムカついた。
「昨夜も思ったんだけどさ。こう・・お日様の下で見るといっそう綺麗だなぁって」
「・・は?」
「きらきら水したたって」
「・・・」
「ほんのり色づいちゃって、すごい綺麗」
「・・・」
えーと・・。そんなこと言われたことなくて、俺ちょっとフリーズ。
「あはっ。乳首ちっさ!」
「・・・っ!?」


瞬間解凍、俺は黒沢を突き飛ばしてた。
バランスを崩して湯船に落っこちていたけど、ぎゃーとか叫んでたけど、そのまま置き去りにした。

なにあいつ・・!

俺の乳首ぽちって触ったー!人差し指でつんとかしたー!
ありえねぇー・・!!



Side:はじめちゃん 5


俺は濡れ髪もかまわずに大雑把に体を拭いて浴衣を羽織ってロビーのほうへ向かった。
怒りにまかせて歩けば、スリッパがぺちぺちと大きな音を立てるけれど気にしない。

あいつ、むかつく!

こんなの別に初めてじゃなくて。
高橋なんかも、からかって触ってきたことあって。
その時は、「ざけんなよっ」て俺も触り返そうとしたら、高橋がむきになってガードするから、お互いに手を出してじゃれあっているうちに、プロレスになったっけ。

そっか。
俺、軽くスルーしとけばよかった。
高橋と違って。
あいつがいかにも、えーと・・スキンシップ(?)に慣れてますお手の物です経験豊富ですみたいな顔して余裕かましてからかってくるから。
そういうのむかつくんだもん。

「ちょ、はじめちゃん、ごめんって!」
「ついてくんな!!」
ペチペチと派手にスリッパを鳴らしてロビー横切ってエレベーターに向かっていたら、髪の毛からぽたぽた滴をたらしながら黒沢が追ってきた。
「悪かったよ。あれくらいで感じちゃうとは思わなかったし!」
「はぁ!?全然感じてねぇし!」
わー、なに言ってんのこいつ。俺もうっかり大声で返しちゃったじゃん。
「だったらいいけど」
「よくないだろ!!」
感じてないけど。感じてないけど。ちょこっとだけ腰の辺りがムズムズはしたけど。
断じて感じてません!

「今度、あんなことしたら」俺は、黒沢を睨んだ。
「・・は?!今度・・?」
「仕返しするし!」
「仕返しって・・」
「あんたのも触り返してやる!」
「や・・はじめちゃんって」黒沢は、困ったように眉毛を八の字にしてる。「ばか?」
「はぁ?!ばかはあんただろ!」

再び大声で叫んでしまえば、チクチクとささる視線。
二人ともぽたぽたと滴はたらしているし、大声は出しているしで、気がつけば、朝早くからチェックアウトしている泊り客の注目を集めていて、なんだかすごく恥ずかしくなって、そのまま足早に去ろうとしたけど。
濡れたまま急いで俺のこと追ってきたらしい黒沢は、浴衣の帯とかぐちゃぐちゃだし。
「これ使えよ・・」とりあえず掴んで出てきた脱衣所にあった未使用タオルを手渡してやる。
「あ・・サンキュ」
「浴衣も直せば?みっともないから」って、我ながら余計な世話を焼けば、黒沢はにこっと嬉しそうに笑った。
そんな笑顔はいらないし。
黒沢は、手にしたタオルをじっと見て、
「・・ばっ・・やめろよ!」
オレの髪の毛をわしゃわしゃと拭きはじめた。
「ほら、じっとしてな。はじめちゃんも結構濡れてるよ?」
適度に水分が取れれば、ぐしゃぐしゃの髪を手櫛でととのえてくれて。黒沢の大きな手が気持ちよくてされるがままの俺。
黒沢は、俺の目を覗き込んで、ふっと笑う。
そうやって優しさだけ与えられればそれは意外と心地いいもので。
心地よく思ってしまった自分が、すごく居心地悪くて、とらえられた視線を、ふいっと外す。

「はじめちゃん?」
「・・あの人たち・・」

視線を外した黒沢の肩越しに、ジョギングから戻ってばかりっぽい外人の、たぶん夫婦と思われる年配の二人連れが見えた。
あの人たち、確か昨日も見かけた。
俺たちと同じ遊歩道を走ってた。遠くから見かけただけだけど、金髪碧眼の容姿は目立つもので、間違いない。

もしかしたら、あのこと見てた・・?

「でどでどでど・・」
「・・はじめちゃん?」
「でどでど・・えーと、ナンだっけ。黒沢クン英語話せる?」
「ん~、そこそこ?」
「昨日アレを見ましたか見ましたこと教えてください私に、please!」
「は?ちょ、落ち着けはじめちゃん。日本語まで怪しくなってるから・・」
「や、だからさ・・」

昨日、ジョギングしているときに、あのことを見なかったか聞いて欲しいというと、黒沢は顔をしかめた。
「それって、はじめちゃん・・」
「そ。黒沢クンが今思い浮かんだヒトのこと」
とまどって固まってる黒沢に、
「さっさと聞いてこいよ」とげしっとケリをひとつ。じろっと睨みはしたけれど、何も言わずに、濡れ髪をかきあげながら、外人夫婦の方へ向かう。

「Excuse me, but…」

は?!
なにあいつ!べらべらブック!
笑いながら流暢なEnglishかましてる!
やっぱりあいつムカつく!!

もうナニを話しているのか全然わかんねぇなと思いながらも見てたら、今ちょっと黒沢の眉根がよった。
俺の予想当たったかな・・。

変わらず談笑していた黒沢が、すっげぇ勢いで俺を見た。
なんだか苦笑しながら首振ったかと思うと、今度は外人夫婦の方がすっげぇ勢いで俺を見る。
な・・なに?
二人とも大げさに肩をすくめて、やっぱり首を振っている。
俺のこと話してる?ってキョドってると、黒沢は笑顔で手を振って別れの挨拶をしながら、戻ってきた。

「Thank you for waiting~」
「うるせぇよ。で、なんて言ってた?」
「それが・・それが・・・」
黒沢は、俺の肩をぱしぱし叩いて大笑い。
「わははは。はじめちゃんのこと、可愛いガールフレンドだねって!」
「・・・はぁ?!」
「わははは。可愛いはあってるけど、Boyって言ったら、ちょーちょー驚いてた!」
「よ・・余計なこと言ってじゃねぇよ!可愛かねぇよ。てめ、やっぱ、ばかだろ」
「”可愛いボーイフレンドだね。大事にしろよ”って言われた~」
「うそをつけ」
「わははは。でも、Girlって言ってたのはほんとだしぃ~」
「んな余計なことはいいから。アレ見たって?」
いらいらしながら問いただせば、黒沢は、途端に真剣な顔をして、こくっと頷いた。

「ん・・残念ながら・・ね」
「そっか」
「はじめちゃん、なんで気がついたの?」
昨日、東済商事社員の聴取の様子をずっと見ていて、ちょっとヘンな情報を持っていた女の人がいたことを話した。
「だって黒沢クンと同じくらいしか会社にいないみたいだったのに、その彼女だけがひとり自信持って話してた。そんな情報を彼女に与えることができるいる人がいるってことでしょ」
黒沢は、静かに頷きながら聞いている。
日数が浅い分、誤まった情報だって、違う意味づけして偽物の情報を刷り込ませることが容易い。
「違う意味づけ?」
「うん。さっきさ、俺、全然アンタがナニを話しているかわかんなかったから。話していたことは事実だけど、話していた内容はウソつけるじゃん?」
「え・・Girlって言ってたのほんとだから!」
「うるせぇよ!」

パチッ、パチッ、パチッ・・

ミユキに言わせると俺のクセらしい。ばらばらだったピースが一枚の絵になってく。パチッと中指の爪を鳴らせば、ピースがぴたりとはまる。

「彼女が、本当のことに気がついたら、犯人慌てるよね。見たくない?」
「はじめちゃん・・?」
犯人に挑戦状を叩きつけるみたいに、黒沢に不適に笑ってみせた。


「犯人、落とそうか?」


150
category : Mix World

08
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31

プロフィール

羽鳥かの

  • Author:羽鳥かの
  • KAT-TUN
    ときどきKinkiKids、
    日々是好日なり。

カレンダー+アーカイブ

プルダウン 降順 昇順 年別

07月 | 2017年08月 | 09月
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


最近の記事

最近のコメント

コンテンツ

おともだちLink

counter

Moon


・月齢・


moon phase info

プラネタリウム

ブログ内検索

Copyright © Selfish-kat-tun-KAN All Rights Reserved.
テンプレート:サリイ (ブログ限定配布版 / 素材: もずねこ)    
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。