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2010.01.26 *Tue*

僕ら極東の片隅で

ナツと恭平の出会い小ネタです。
芸能人Jと一般人Kのパラレルみたいになっちゃったけど。




Side:恭平

他人に見られるのにはいい加減慣れた。
不躾な視線を浴びるのなんかしょっちゅうだ。
いちいち気にしてなんかいられない。

なのになんでだ・・?

後から突き刺さってくる視線が気になる。
間近じゃない、少し離れてはいるけど、確かに誰かに見られてる。
うなじにとどまったまま動かないちりちりと刺すような乾いた視線。
直感的に男だ、と思う。

俺は、深夜帯の工事現場のバイトを終えて、始発を待つバス停にひとり佇んでた。
顔良し、頭良し、性格良しと揃ってるのに、なんで金だけねぇんだろ、俺。
自分を不運だと思ったことはないけど、金運はない気がする。
おかげで、時給の良さにつられて真夜中の肉体労働のバイトにいそいそだ。
まだ3日目だけど。
真冬の夜明けは遅くて、痛いくらいに冷たい空気のなか、あたりは青白くくすんでる。
寒いし疲れてるし眠たいし、頭の芯がぼぉっとしてるけど、世間がまだまだ眠りについているこの時間帯がけっこう好きだ。
人間だけがこの世界から抜け落ちて見えるところがいい。

気づかれないとでも思っているのか視線はずっと張り付いている。
俺は、ちっ、と小さく舌打ちした。
無視するのが一番だけど、わざわざ振り返るのも悔しいけど、イライラした分ぶん殴って礼してやればいいかと思い、相手の不意打ちを狙って、振り返った。

・・・れ?
だ・・れもいない?

振り返った後ろにも、青白くくすむ空白の歩道が広がっているだけ。
おかしいな。
でも視線は今もそのまま感じる。
テン・テン・テン・・と空中に点線を描きながら視線の軌跡を辿ると、たぶん昨日まではそこになかったポスターが1枚見えた。

LANDS?

風化したペンキが剥がれ落ちたような加工がなされた真っ赤なゴシック文字でLANDSと記されたポスター。
フードを目深に被っているヤツがひとり写ってる。
バチッ・・と、俺は、視線のヤツと目があった。
っんだよ、ポスターかよ。
気が抜けたつーか、自分にあきれるつーか、思わずついたため息が白く長くのびた。
うっわ、もう、俺って自意識過剰ってやつ?
いや、ちがう。
こんなの初めてだけど、こいつ見てた。
俺のこと。

おまえ・・誰・・・?

一度意識してしまうと不思議なもので、下宿先のリビングで何気なく開いた新聞のTV欄から“LANDS”の文字が浮かび上がって目に飛び込んできた。
もう何十年も続いている老舗の歌番組の出演者に名前を列ねている。
マイナーなヤツらかと思ってたら、どうやらメジャーなBANDだったらしい。
掛け時計を見上げれば、待つほどもなく、コーヒーを淹れて部屋に戻ればはじまりそうな時間だ。
俺は、心持ち急いでコーヒーを淹れ、自分の部屋へと戻った。

提出間近のレポートをこたつの上にひろげて、LANDSの出番を待つ。
中盤くらいに出番が来て、LANDSの曲が終わり、CMに切り替わると、俺は走り出してた。
カップに半分くらい残ってた冷めたコーヒーが、はずみで揺れてこぼれるのが視界の端に映ったけど、置き去りにした。
近所にある本屋に向かい、自動ドアが開くのももどかしく体をねじ入れて、入り口から右奥にあるCDコーナーへと足早に向かう。
ラ、ラ、ラ・・ラン・・ズ、五十音順に並べられた棚からLANDSのアルバムを1枚引き出す。

くっそぉ・・。
高杉ナツのヤローめ。
万年金欠の俺様に金を使わせやがって。
いつもならレジに置き去りにするレシートを、乏しくなった札の代わりに乱暴に財布に突っ込む。
来たときと同じように下宿先に戻るため俺は走り出した。

歌番組で、高杉ナツの名前を知った。
LANDSのボーカル。
明け方に出会った視線の主。

想像していた声と違う、なんてことはなかった。
声なんて想像とかしてなかったから、司会者と話す声に、あ・・こんな声してんだと思っただけだ。
もそもそ・・ぼそぼそ・・そんな感じで話すヤツ。
緊張してんのか、ハットのしたから覗く目がきょときょと泳いでる。
笑い声はちょっと可愛い。

1小節歌い終わって、俯きながらスタンドマイクを抱きしめた高杉ナツが、ギターの音にあわせて顔を上げた。
TV画面越しにバチッと目が合う。
有刺鉄線を素手で握り締めたみたいにぞわりとささくれた鳥肌が立つ。
けど、歌声は俺を優しくしっとり包み込んだ。

その夜、コーヒーの染みがついたレポートは終わらなかった。



Side: ナツ

伸び始めた髪を切ろうか伸ばそうか、ちょっと悩んでるころだった。
恭平と出会ったのは。


どちらにしてもちょっとだけ天パがかってる俺の髪質は、もさもさふくれるから、大して印象が変わったりしないんだよね。
プラベではわざわざ髪をセットするのも面倒だから、たいてい帽子を被ってる。
今は、防寒もかねて大きなポンポンのついた紺色のニット帽を目深に被って、真夜中のコンビニへ行くところ。
部屋の暖房の温度を上げすぎて、ほてってしまった体に外の冷気がクリアで気持ちいい。
作りかけのメロディを頭の中で奏でながら歩く。

とくに買いたいものがあったわけでもなく、ちょっとした気分転換。
紙パックの野菜ジュースとミネラルウォーターのペットボトルを左手で掴んで、レジに向かう。あとは、煙草1箱。
大体いつも買うものは同じ。
コンビニでの買い物なんてほとんど癖みたいなもんだ。
俺の前にいた同い年くらいのにぃちゃんがちょうど精算を終えるっぽいところのレジに並ぶ。
そのにぃちゃんが財布からお札を取り出したところで、つられて舞い出た白い紙がひらりと俺の足元に落ちた。
見れば単なるレシートだし無視しちゃえばいいんだけど、こういうのってさ、なぜか小さな切り傷みたいにちくっとする罪悪感を後々まで引きずることになるんだよね。
面倒くせぇと思いながら、長い間財布に入ったままだったのか、よたっているレシートを拾って、俺は、「ね、落ちたけど」と声をかけた。
聞こえなかったのか無反応なにぃちゃんにもう一度声をかけようとしたら、こちらをくるりと振り返って、すっげ眉をよせて、なんだてめぇって顔でにらんでくる。
うっわ、柄わりぃ。
けど、かなり美人。
「これ」と拾ったレシートを見せたら、とたん表情がやわらいだ。
「あ・・サンキュ。たすかっ・・!?」
俺と目があったにぃちゃんがびっくりして固まってしまう。
あ、俺のこと知ってんのかな。
滅多にばれたりしないんだけど。
「お客さん、あのおつり・・」
「あ、すいません」
お釣を受け取るともう一度俺を振り返って、くるりと瞳を一回転させて、何も言わずに出てく。
なんだあれ。

「あのさ・・」
「わっ!」
てっきり帰ったと思ってたにぃちゃんに、ドアを開けたところで声をかけられた。
座って待ってたらしくゴミ箱の陰になって姿が見えなかったから、びっくりした。
外は暗いけど、店内からもれる照明や看板を照らす灯りで、こいつの顔がよく見える。
やっぱ、きれーな顔。
「おまえ、高杉ナツ?」
ははは。おまえだって。
やっぱ、柄わりぃ。
すぐには返事できないでいた俺を、小首をかしげながらまじまじと覗き込んでくる。
俺より身長が低いから、自然上目遣いになって見つめられる目に、どきっと心臓が鳴った。
こいつの瞳の中に映ってる俺が、とまどいながらこくりと頷く。
「そっか」にぃちゃんは、ほっとしたように笑った。「これ、見せたくて」
先刻拾ったよれよれのレシートを俺の目の前に差し出して、とんとんと指で示す先にLANDSの印字。
「・・アルバム買ってくれたんだ?」
「そぉ」俺が確認したことを見て、目を細めて満足げに微笑み、そのレシートをまた大事そうに財布にしまった。
眉を寄せてた怖い顔がうそみたいに可愛い笑顔。
「なんか・・伝えたくてさ」
こんな偶然あんまなくね?と笑うこいつに、俺だって、いつもこんな風にバレることないんだとか例えバレても普段はしらばっくれてることを言いたかったけど、どう言っていいかわからなくて、「そだね」と小さく口ごもってしまう。
「はじめて会ったとき、もっと怖そうなヤツかと思った」
「え?会ったこと、ある・・?」
「や、はじめて」
「だよね」
「実際会ってみるとそんなちくちくしねぇな」
「ちくちく?」
「そう、ちくちく」と言いながらふっと口の端に笑いを浮かべる。
なんか笑うと可愛いヤツだなぁ。
「な、またアルバム出る?」
「うん、今作ってる」
「そっか。俺、あんたの歌好きだよ」
「あ・・りがと」
ぼっ、と頬が熱くなるのがわかる。
うわー、俺、今顔真っ赤だよ。
内心焦る俺を気が付かないのか気にならないのか、じゃね、と片手を振ってあっさり去っていくにぃちゃんを呆然と見送る。
なに・・なんなのあれ。

ぽっかーん・・としたまま帰り道を辿る。
そういえば、握手もサインも求められなかったのは初めてかも。
でも、好きって言ってくれた目はキラキラしていて、なんかほんとに好きでいてくれてんだってうれしかった。
あっ・・なんかメロディうかんだ。
頭ん中つぎつぎに音符が出てきて飛び跳ねる。

その夜、曲をひとつかきあげた。

はじめて会ったヤツなのに。すっげヘンなヤツだったのに。
この曲を一番にあいつに聴かせたいと思ってしまった俺。

つか、あいつ誰?

名前なんか聞かなかったけど、真夜中のコンビニを歩いて帰ってたから、きっと近くにいるだろう。
また、偶然会える気がするから、ま、いっか。
category : Mix World

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